一昨年、某女子大学の家政科で半年間「塗装の実習」を講義した。シェラックとオイルとミルクペイントの3課題が実習課題である。その時、話したことからいくつか拾ってみたい。
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まずはシェラックから。
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シェラックは、唯一天然に存在するポリエステル樹脂である(間違っていたらごめんなさい)。シェラックは、ラックカイガラムシが豆科・桑科の樹木に寄生し、樹液を吸い体外に分泌した樹脂状物質のことだ。日本では殆どとれず、インド産やタイ産である。樹木の枝にカイガラムシが群集するために樹脂層が一塊りの棒状となる。これをスチックラックと呼ぶ。スチックラックを粉砕し、ふるい分けをして水洗いし、虫殻、木質、水溶性色素などを除去する。これをシードラックと言う。水溶性色素は回収され、食用色素や染料となる。
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セラックニスもシェラックが訛ったものだ。
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以下の箇条書きはネットから。
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シェラックの特徴:
+常温でアルコールによく溶ける(ただしゆっくりと)
+耐摩耗性はまあまあ
+水に溶けない
+電気的に不導体、強靭な耐油性
+熱に容易に溶融

用途:
+塗料だけではなく、食品、医薬品、化粧品にも使用
+食品:粒状チョコレートの表面をツルツルにする皮膜材、柑橘類の保護皮膜材、レモンやチーズに印字するインクにも使用される
+医薬品:酸に強くアルカリに弱いことから腸で溶ける錠剤に使用(腸溶性皮膜材)、臭いを遮断するので、錠剤にコートして薬臭さを消す
+化粧品:マニキュア、マスカラ、ヘアースプレー

授業では、フレーク上のシェラック47.9gをエチルアルコール200ccに溶かして(2ポンドカットという)使用させた(1班3名)。材料はスプルース、電動糸のこで希望の形に切ったあと、紙ヤスリで#320までかけた後に、シェラック塗装を施した。できあがった作品はこちら。
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|学生作品|

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シェラックは刷毛で素早く塗らなくてはならない。何度も重ね塗りをしてはいけないのだ。これができばえに大いに関係する。その差が出た授業だったが、塗装の楽しさはわかってもらえたと思う。
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ポリウレタン:いまある家具のどれをとってもほとんどがポリウレタン塗装といってよい。このことは実は家具にとっては不幸なことだ。つまり、できた時点がもっとも美しく、それが時間の経過とともに次第に劣化してしまうからである。
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もともと家具は、時間の経過とともに、風合いや、傷や、場合によっては汚れた感じなど、まさに時間を感じさせてくれるもの、これが家具なのだ。イギリスなどでは、蚤の市で古い家具ほど高値で取引されている。
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ポリウレタン塗装はちょうどその逆で、できたばかりがもっとも綺麗で、あとは風合いもなにも感じさせてくれない。要するに補修が難しい塗装なのだ。
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