塗装の続き、ミルクペイントである(一昨年、某女子大学家政科での「塗装実習」の講義記録から)。

ミルクペイントは、基本的にはシェラックやオイルとは異なり、単に色をつける方法である。普通の塗装とは若干意味が異なる。

塗装というと色をつけることだと思っている人も多いと思う。確かに色をつけるという側面もある。しかし、塗装には、膜で塗装面を保護するという性質や、木が動くことを安定化させるという性質もある。塗装の装飾性はその一部である。

色をつけることは、英語でステインと呼んで塗装とは区別している。日本語では特に区別はない。色をつけた上に、オイルやシェラックやニスやラッカーなどを用いて、その色を保護しているのである。

ステインつまり色をつけることにはご存じのように2種類ある。ひとつは顔料、もうひとつは染料である。顔料は落ちやすい性質を有し、染料は木材に染みこむ性質を持つ。ミルクペイントは顔料と呼ばれるものである。

ミルクペイントの歴史および性質について説明する。これは、米国の開拓時代にアメリカの職人が作り出したものである。そう歴史は古くない。主成分はミルクカゼインという牛乳から抽出したタンパク質である。白色の顆粒状粉末の状態だ。ミルクを酸で処理し、沈殿させて採取する。動物性の糊剤として膠と同様に使用される。膠よりも極めて強力な固着力がある。

水に溶けるので極めて扱いやすい。ただし、苛性ソーダが入っており、ゴム手袋をしないと手の弱い人はアルカリが強く手をやられてしまう。ただし、このアルカリも水で混合するまでの間で、酸性のミルクカゼインと中和してしまう。

環境に非常に安全で、乾燥してからも毒性もなく、臭いもない。

ミルクペイントは米国で作られたものしかない。そしてたくさんの色がある。

授業では、数あるミルクペイントの中から、日本人に好まれるものを選んで使った。写真は手板である。緑、赤、青、白の4色。下段には赤、緑、青の上に乾いてから、さらに白を重ねて塗った物である。そして、サンディングをかけた。これにより古びた感じをだすことができるが、あくまでもフェイクである。

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緑、赤、青、白の4色を使った


ミルクペイントの価格は、そう安くはないが、かといって高いというほどのものでもない。米国では安価に売られている。国内のネットでは、2950円/170gであった。

ミルクペイントは、粉状になったものと、すでに水を混ぜて売られているものがある。粉状のものは、カタログでは半永久的に保存できることになっている。

ミルクペイントを塗る要領は至って簡単。木材を水で湿る程度に軽く塗らす。色を染みこみやすくするためだ。1回目を塗る。1時間ほど乾かすが、これは乾きさえすれば短くても充分。サンドペーパー#150をかけるが、こすっているとミルクペイント自体がどんどんはがれてきてしまう。そして、2度目を塗り、1 時間ほど待つ。

一度目に有彩色、二度目が白の場合には、古びた風合いを出すときに有効な方法である。この場合は、白を塗った上から、紙ヤスリで表面をこすると風合いがでる。ただし、このこすり加減は、経験や勘にたよるところが大きい。

写真は、この風合いを出したところ。

IMG0032.jpg
風合いを出す

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Last-modified: 2009-07-19 (日) 15:02:50 (5389d)